2003/07/30
■プリズム(貫井徳郎 2003/01
 うわー。うわぁ。うーわー。感想書きにくいな。いや、面白かったんですが。私の好みではあったんですが。ええ、こういうのは好きですよ。途中で作者の意図には気づくものの、ちゃんと楽しめる作品でしょう。全四章の構成も上手い。最後の章は最初の章にリンクしていて、読者はこの輪の中に閉じ込められちゃう感じ。多重であると同時にリングなんだよね。小説の構成美はすごいと感じた。あと、作者から読者への結末の譲渡というか、ある意味、むしろ放棄?それもまた、すごい。消化不良といえば、そうだけど、いや全然面白い。一人称で進む割には読みやすい文の構成。見えてくるキャラクターの性格の多重性。視点の切り替え。新推理の構築と崩壊。全員が自分の満足のために動いているのがステキでした。あの、警察の人がいいです。もっと引っ掻き回してくれるかと思ったら、案外地味だったけど。あ、私としては第二章の推理が好き。

2003/07/28
■図書室の海(恩田陸 2002/02
 短編集〜。えーと、まぁ、恩田陸っぽいな、と。サヨコの番外編は面白かった。こう、恩田陸の作品は、どこかでキャラクターがリンクしていて、それを発見するのが二次的な楽しみとしてあるよね。関根家族は、安直な名前だけど、春、夏、秋、の兄妹がいて、それぞれ違った作品に登場していていい。『六番目の小夜子』とか『puzzle』とか今回の『図書室の海』とか。ちなみに関根家の父は『象と耳鳴り』に出てるらしい。『麦の海に沈む果実』の主人公理瀬の幼少期のエピソードも短編に入っていた。こういうリンキングが大好きなんだろう、恩田陸は。まるでCLAMPのようですね。

2003/07/26
■魔界転生・下(山田風太郎 2002/11
 上巻を読んだのがけっこう前・・・なので、感想は別々に書きます。この話は、柳生十兵衛が主人公で、悪いツワモノたちをバサリバサリと一対一で打ち負かして行く形式。で、いや、まぁ、十兵衛も頭いいから策士なわけで、一対一の真っ向勝負というわけでもないんだけどね。頭いいというか、運がいいというか。敵も、もうちょい頭使えよ、と思う感じにやられてゆく〜。上巻の感想で書いた「私予想→結末はスターウォーズのようになりそう」というのは、あんまり実現されなくて残念。結末じゃなくて中盤で、それっぽく盛り上がってた。いや、この対決は、普通ラストじゃないか?なんか、前半の方がおもしろかったなぁ。後半は、パタパタ敵が倒れていくだけだった。

2003/07/25
■はなれわざ(クリスチアナ・ブランド 2003/06 ブ
 え。なにが「はなれわざ」だったのか皆目分かりません。「わざ」が「はなれてる」意味が分かりません。もしかしてトリックのこと?意外な犯人のこと?大道じゃないですか。何一つ、おどろきもなかった。というか。中盤でヒントが示されたあたりで、誰もが思いつくでしょう。だって、キーワードが分かりやすかったし・・・ねぇ。ずいぶん読者に親切だな、と。その可能性を疑っていれば、クライマックスあたりは淡々としてられた。そんなわけで、長々と書いてあったわりには、あっけないラスト。二転三転する推理もおもしろいといえばおもしろいが、白々しい。全部それっぽいということは、全部嘘っぱちなわけで。本格は、型どおり。ゆえに、私のツボにクリティカル・ヒットはしてくれません。

2003/07/23
■ソラリスの陽のもとに(スタニスワフ・レム 1977/04
 改行少ないよ。まぁ、訳があまり不自然ではなかったので読めたことは読めた。SFってその世界の専門用語とか理解しないとイメージ沸かないのが多いけど、これは比較的想像がしやすかった。惑星ソラリスと、その海の設定は好き系。SFというよりは、個人の内面描写が多かったような印象。後半の例の人がいなくなるあたりがあっさりしすぎじゃないですか。もっと激情渦巻く感じに仕立てて欲しかった。あれ?どこいったの?といううちに、クライマックスもどこだったのかわからないのに終わっていた。このソラリスで、何一つ解決や理解がなかったというのは、なんですかね。未知は未知のまま。そこに魅力があるとでも言いたいのか。

2003/07/21
■奇偶(山口雅也 2002/10
 ええっと、コレはミステリー?ミステリーなの?ミステリーとして読んでいたので、微妙な印象?ラストごまかしてない?オチてなくない?あの後半たびたび出てくるリセットメッセージは、何なんですかね。個人的には面白かったけど。そういえば、例のものすごい低い確率で起きる現象について、誰だっけ、麻耶?も使ってなかったっけ。あれは、ミステリーとしては御法度トリックじゃないですかね。いや、あれが本当のトリックだったのかすらわからないが。なんだそれはー。この本は全体的に宗教だか哲学だか心理学だかの香りがプンプンしてて、ミステリーらしくしようとしてなかったからそうまとめられても仕方が無いといえば仕方が無い。私の求めていた劇的なオチは無かったので、どうも、ええ、そんな具合ですよ。そういや、サイコロでぞろ目って案外出るけどね。このまえふってみたら、3回目で6のぞろ目が出た・・・。

2003/07/17
■ネバーランド(恩田陸 2000/07 )
 数年前に読んだけど、再読。4人の学生がウゴウゴしてたな、という記憶しかなかったから、読み返してようやく思い出せた。最初に読んだときは、4人の見分けがつかなかったなぁ。今もあんまりついてないけど。こう、4人が集まって過去の暴露とか自分の想いを語ったりとかって、『黒と茶の幻想』と同じパターンだよね。『黒茶』のアキヒコと、『ネバーランド』の光浩は、キャラが被りすぎではないでしょうか。過去とか似てて。まぁ、秀才君キャラだから、共通点が多いのは、役どころとして仕方が無いのかもしれないけど。ちょっと、高校生を美化しすぎかな。でも、恩田陸って夢見がちなところ多いからね。こんなもんか。

2003/07/17
■GOTH(乙一 2002/07
 ほほう。初めて乙一を読んだ。非常に読みやすい。文の構成が上手なのか、イメージしやすいテキストだった。そのぶん、トリックはわかりやすい。読んでいて違和感があれば、そこが伏線を張られた瞬間だとわかる。必要最低限のものしか書き込まれていないから、だいたいオチも予測できる。叙述トリックなのかどうかはわからないけどとりあえず仕掛けはしてあって、ラストにさらりと世界が崩される印象を、この『GOTH』からは受けた。けど、ドラマ性を重視してるからミステリ要素にはこだわってない、って作者言ってるしね。これはミステリを超えて、小説として楽しめたので、乙一のほかの作品も読んでみたい。

2003/07/15
■ゼフィルスの棲む場所(柴田よしき 2001/07
 関西弁探偵ってさ、胡散臭いよね。なんでか知らないが。偏見かもわからんが。関西の人、すいません。内容としては、まー、普通。悪くも無く。す・・・すげえ!ってこともなく。地図に無い村にやってきた作家、年に一度の若い村娘たちが踊る蝶(ゼフィルス)の舞、そこで行われたのは犯人のいない殺人。うーん、すてきに型どおり。や、おもしろかったですが。犯人の意外性とか? 意外といえば意外だし。盲点といえば盲点だったし。

2003/07/14
■魔界転生・上(山田風太郎 2002/11
 上巻がおわったので、現時点での感想を。案外、おもしろい。歴史小説っぽいわりには、なんというか「悪を倒せ!正義を貫け!」みたいな、子供用アニメによく見られる、わかりやすぅいテーマも見える。大体、結末まで予想できる感じがあるから、安定してる。けど、つまらなくはない。私予想→結末はスターウォーズのようになりそう。この本はスピード感があっていいね。映画にしたらいいんじゃないか? こういうの、二時間でちょうどいいかも。濃いくなりそうで、どうかとも思うが。あ、人名がなんとも読めない。私の教養の無さってことを暴露しているようなものか。いやー。読めない読めない。漢字が〜。さあ、下巻を読もう。

2003/07/10
■スローカーブを、もう一球(山際淳司 1985/02
 野球に興味がないゆえ、用語からの想像がめんどう。よって、おもんないです、私にとっては。想像力が貧困だと言われればそれまでよ。野球はねぇ、えーと、キライに近いからなぁ。これが、ビリヤードの話だったら全然OKなんだが。ナインボールがキス・ショットでサイド・ポケットに入ったとか言われたら、ををを、って思うし。野球って題材がいかんとも。や、短編集だから野球以外の話もあったけどね、もぅスポーツの臨場感が伝わってこない。文字で伝えようとしてるのかも読み取れない。リアルさが、ないよ。もっと改行を多くして、もっと感覚的な言葉を列挙して、瞬間を描いてもらわないとね。リアルに作りました〜と言わんばかりにして欲しかったが、なんか、間延びしたインタヴュー形式だから、あっそ、で終わっちゃう。スピード感のなさも、どうかな。活字を読んだ、という一冊。んん。

2003/07/08
■GO(金城一紀 2003/03
 「ふうん」で、終わりました。すいません。いや、ほんと。何か、感銘を受けたほうがよかったのでしょうか? すいません。感動できませんでした。書き方が、読みやすくてよかったけど、薀蓄多くて。「僕は▽▽と△△がすきだった。なぜなら××だからだ。彼女は◇◇と□□がすきだった。なぜならだ○○からだ。」とか、こういう繰り返し繰り返し韻を踏んだかのような文には辟易。うんざりよ〜。それに別に、韓国・朝鮮人に何か思うところはないし。苦労してそうだとは思うが。「その、他人事気分をやめてくれ」と、この本は言いたいのかもしれない。差別っていうのは、なにも韓国・朝鮮人にのみ行われているわけでもない。私個人としては、目立ちたいわけでもないのにはみだしちゃってる人全般に、白い目が向けられるのは、社会が社会であるために必要な要素なんじゃないかとすら思うが。悪意的解釈で申し訳ないが。ちがう? 「どうして俺が・・・」なんて状況は全員ありえるんだし。そこで、ぶちかますか、耐え忍ぶか、各自の自由だし。ちがうの? 生まれた状況はあきらめる。出発点を憎まない。そこから満足化・最適化を目指して動き出す力をつければいい。そういう意味で「GO」だったんだと思うけどね、タイトル。あー、まぁ、いい話だったのかもしれない。どうかな。

2003/07/07
■砂漠の薔薇(飛鳥部勝則 2000/11
 個人的には面白かった。否定する人が多かったけど。え、面白くない?ダメ?作品としてのダメさが私は好きなわけで、ダメを嫌うなら、もうダメダメなのかもしれない。キャラクターも人形劇みたいにパタパタしてたし生首の話なのに生臭くないし宗教くさい話に満ち満ちているけど、叙述トリックらしきものも不愉快ではないし全然全力投球じゃない作品全体の雰囲気とか笑えるし。要するに、けなしてるわけでもないのにけなしちゃうけど、それって「けなし褒め」なんだよね。個人的には好きだけど、世間一般の理解は得られない模様。

2003/07/06
■白昼堂々(長野まゆみ 2001/11
 長野作品は字が大きくて改行も多いから、読みやすくてつい読んでしまう。ほんと、つい、という感じ。最近、暇な午後は、図書館を利用してみたりするが、借りる本の中に、つい長野を入れてしまう。他の本が読みづらかったり、活字にうんざりしてきたり、そんなときは長野へ飛べば、スラスラと・・・という具合。いや、内容もおもしろいから、好きですが。またまた、少年の透明感とでも言うのだろうか、うまいよね。もう、エロだよ。ちょっと書き方間違えたら、辟易しちゃいそう。そこがうまいんだろうね、この作者は。と、毎回読みながら思う。
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