2003/10/28
■三月は深き紅の淵を(恩田陸 2001/07
うーん。手堅いですね。上手いというか。ザ・まとめました、みたいな。タイトルの意味づけというものの逆転の発想ですか。何が三月で深き紅で淵なのか、印象深いタイトルなので、どのように鮮やかに意味を付加していってくれるのかに注目して読み進めていくとですね、この本は四部作なんですが、それぞれの章でタイトルの扱いが様々なんですよ。タイトルというか、作中作というか、入れ子方式で、この本の中にこの本が登場するわけで。作者不明のこの『三月は〜』という本をめぐるの謎の解明、あなたはどのストーリーで納得しますか?と言われた気がします。よく見かける、「たくさんの推理があったけど、この謎は、作者が決めたからこの解決法に収拾されました」というパターンとは違って、「この謎は、作者が考えるに四つくらいのパターンが挙げられるわけなんだけど、まだまだ話を作り出せそうな魅力的な謎でしょ?」と語りかけられてるような作品です。ある意味、一つの安定した解に辿りつくわけではないので、不満足・未消化でもあるわけですが、安定した解というのもそれはそれでつまらないもの。すっきり解決は、心に残らないものですから。

2003/10/26
■ダブ(エ)ストン街道(浅倉三文 2003/10 ブ
ミ、ミステリーじゃない!メフィスト賞受賞作品なのにミステリーじゃない!と、そこにばかり驚いていました。このタイトルの(エ)の扱いについてのっぴきならない事情があるのかと、解決編を心待ちにしていたというのに。これは、ファンタジーなんですね。そう、ファンタジー。ミステリーじゃない。ファンタジー。納得。ええ、ファンタジーです。おもしろかったですよ。もちろん。ちゃんと随所にリンクが張ってあって、わけのわからない登場人物とかもなかなかだったし。ダブエストンの魅力がちょっとわかります。

2003/10/24
■ヒトクイマジカル(西尾維新 2003/07
トリック、犯人、完璧に予想的中。これは難易度が低いというか、全然盲点をついていないですね。考えればわかるし、ミステリの中でも王道の技だし。それにラストがなぁ。いーちゃん、何してるの。毎回、重症をおわないと気がすまない体質なのかね。いーちゃんがぼこぼこにされて何を確認したかったのかっていうのはいいとしても、犯人との決着が・・・。やはりこのシリーズは、犯人やミステリーとかよりも、主人公の人格にばかりスポットライトを浴びせては弄くり倒す、青春小説なのでしょう。それはそれで構いません。謎の人物もいい感じにばんばん出てきて、ストーリーも無茶がいっぱいだし、余裕で楽しめたりするので。次回作はいつ出るのかな〜?

2003/10/16
■屍鬼・下(小野不由美 1998/09
え、上巻を読んだのが6月のことでしたが、漸く下巻も読み終わることができました。下巻の後半はすごい面白くて、一瞬で消化できました。フィクションの割には人間の人間たる一面に肉迫した描き方がされていたので、テーマもビシバシ伝わってきてさすが小野不由美といったところです。上巻のジワジワジワジワした展開には飽きが来たものの、ラストのあのクライシスへ向けての溜めであったのなら頷けます。やはり長かったけど。登場人物が多すぎて把握しきれませんでした。でも、清信と敏夫、人間と屍鬼、昼と夜、生きていることと死んでいないこと、様々なものが対立、交錯して、うまく煮詰まっていた作品ではないかと思います。

2003/10/09
■きみにしか聞こえない(乙一 2001/05
くあ。せちゅないね。なぜだ。なんなんだ。だまされてるのか。『Calling You』『傷』『華歌』のどれが好きかといえば『Calling You』でしょうか。こういうラブストーリーは好きですね。ベタベタの押し付けがましい感もなくてね。『傷』のオチはある意味予想外でした。『華歌』はー、えーと、ね。うっかりしてました。そうそう乙一ってこういうことやる人だったよね、というワザが煌いてました。またー。乙一は。あ、この人のあとがきはおもしろいですね。ちょっとマンネリ気味ですが。

2003/10/09
■失踪HOLIDAY(乙一 2000/12
明るい。乙一の話の中でもけっこう明るい。コミカル。でも、きちんと切ない系のオチをもってくるのね。すごい技量。本当に書き口が緻密で、文章を読んでいるというより映画かアニメーションを見ているみたいです。構造に無駄が無いせいか伏線が張られた瞬間が弱冠分かりやすいのは気にかかるものの、きちんと使いこなしては落ち着くところに落ち着かせるというその手腕に、見ていて安心感がありますね。ほめほめ。

2003/10/08
■サイコロジカル 上・下(西尾維新 2002/11
あははー。いい感じのマンネリ。とにかくいーちゃんは毎度巻き込まれつつ戯言吐きつつボロボロになりつつ真相に気づきつつ、しかしそれはどうでもいいのでしょう。記号化小説としてのお決まりがふんだんに盛り込まれているのさえ気にしなければ、構造は比較的すっきりしているので安心して読めます。巻数を重ねるごとに、徐々に過去の秘密が明かされてくるのも引きがあっていいですね。玖渚といーちゃんのプラトニック具合も微笑ましい。
あああ、そうそう、本文にジェリコ941という名称のピストルが登場していたのにちょこっとビビッときました。私のHPタイトルですね。そもそもは某スパ○クさんの愛銃です。ジェリコ万歳!

2003/10/06
■カルチェ・ラタン(佐藤賢一 2003/08 ブ
案外ね、おもしろかった。前半、神学についてのウダウダがめんどかったけど。ミシェルの超人ぶりに拍手。万歳。この人がいてのカルチェ・ラタンよね。きちんと主人公か一冊のうちで成長しているので読んでてよかった気がしました。ダメダメなドニ君がミシェル離れをしていくのがね。これは萌え小説ではないと信じてますが、そういった要素を見て取れといわれれば見て取れそうな気がそこはかとなくしなくもない。

2003/10/01
■クビツリハイスクール(西尾維新 2002/08
さらりと読めたのでよかったですね。西尾維新くさい。元を辿れば清涼院くさいのですが、パクリのようにも見えつつ一応、西尾維新ブランドとして立ち上がっているとは思うので、戯言戯言うるさいながらも楽しめたと言えます。こういう若い世代の作者に多い綻びだらけの作品は、完成度には不満足ながらも規定のテキストから突飛した部分があるので、そこがおもしろいのでしょう。本格ミステリより、新本格。新本格よりアンチ・ミステリ。既存のものから如何にして脱却するか。そこがポイントなのです。だから、西尾維新はチャレンジャーなわけで、私としては評価に値します。ずいぶん褒めてるような気もしますが、テキストとしてはもっと緻密に描いてほしいところです。

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